先日広島商工会議所は大田会頭の退任と新ビル計画を発表しました。

今、私の手元には3種類の資料があります。新ビル計画の商工会議所会員向けの資料と昨年度の決算、それに有志が広島市に情報開示請求した米神副市長と大田会頭との商工会議所移転に関するやりとりを記録した広島市の資料です。

このうち広島市の資料は歳暮の新巻鮭のようにぐるぐる関係者の中を回っていたものが私の手元にたどりついたものです。副市長・会頭以外の氏名や具体的な発言が敗戦後の教科書の如く盛大に墨塗りしてありますがそれでも残った部分や、前後からやりとりの概略は分かります。

これらの資料を見ると今回商工会議所もとい大田会頭がどれだけえげつないことをしたのかが分かります。

資料を全て貼るのも無駄なので主要なとこだけサクッと抜粋します。
(貼り付けた資料は画像ファイルなのでクリックで拡大します。)

まずはこの部分。私は商工会議所の球場跡地への移転は広島市が持ちかけたものだと思っていました。商工会移転1

しかし、この文書を読むと広島市は市有地への移転を持ちかけていて、国有地への移転へ希望しているのは商工会議所だと分かります。
広島市が移転を持ちかけたのは景観問題と広場と原爆ドーム・平和公園との一体感を妨げるためであろうと推測します。

また、今のビル建設に際しては市・県が補助金を出したとわざわざ言って今回も当然の如く出すことを求めています。商工会移転3


次にこの部分。何気ない発言ですが会頭の「商工会議所は市に協力しようとしている」この部分はこの新ビル計画に対する商工会議所のスタンスを表しています。商工会移転4
要は広島市に協力するんだから金を出すのが当然です。

ここからは会員向けの新ビル説明用資料からです。

まずはこの様な意見を広島市に出しています。商工会移転5
2に関しては商工会議所としては妥当な考えでしょうし、実現する方法もあります。問題は1です。広場の運営を商工会議所主体にしろと言っているのです。ここには出しませんでしたが、この文書には都市公園である広場を自由に商売のできる特区にしろという広島市に対する意見も書かれています。また、先の米神副市長と大田会頭との会談の中であの場所の広場でイベントをすれば何をやっても成功すると大田会頭は発言しています。これでは商工会議所が儲けるための広場設置ととられても仕方ないのではないでしょうか。

更には森のパビリオンに設置場所と設置・運営がNTT都市開発であることに食いついて広島市に食いついてます。移転物言い

それに対する市の回答がこれです。商工会移転6

これだと商工会議所を移転してまで得た平和公園・原爆ドームと一体感、(恐らくこの計画の唯一の利点)まで失うってしまいます。ましてやその理由が商売の邪魔というのはいかがなものでしょうか。

どの資料を見てもどうやって儲けるか、如何にして金を引き出すか。そればかりなのです。

回遊性とか周辺への波及といった広場や新ビルの大義はどこにもないのです。

具体的なお金の話はこちらの資料になります。
この資料では土地代の差額、現商工会議所ビルの解体費など約20億円を補助金で出すことになっています。商工会移転0
私の記憶では商工会議所の建て替えに対しては賛成でもそれは会議所の事業で市は費用を出さないと言っていた市議が多数いました。彼らが自らの言葉に責任を持つようであればこの補助金は下りないとおもうのですがどうでしょうか。

また建て替え費用そのものは賃貸部分の賃料収入を担保に銀行借り入れを考えているようですが、周辺ではオフィスビルの空きが目立つ状況で新ビルが満室になる可能性は低いと考えます。仮に空き室が出た場合でも公益法人である商工会議所は周辺の貸しビルの経営を圧迫しない為にも安易な賃料の値下げは出来ないはずです。

こちらは21年度の商工会議所の決算です。商工会議所決算21年度
移転しただけで賃料収入が1.6倍になるとは私には思えません。

大田会頭は広島電鉄の社長時代「先進的なことを言うの幹部を含む社内の人間が理解できない」と言われてました。会頭への就任も幹部連中から煙たがられて社社外へ追い出されたようなものです(この辺りの経緯は平岡前市長とよく似ています)財界と市政の繋ぎ役として会頭になった大田さんですが、自らの社内での影響力の低下を考えると広島市の広場案に合わせた新ビル計画を出した今が身の引き際と考えたのではないでしょうか。

しかしながら商工会議所が見込んでいる賃料収入が計画通りに入ってこない場合、会議所の財政を圧迫し一般向けの事業が影響を受ける可能性があります。広島県の事業仕分け対象には商工会議所向けの補助金も含まれています。
下手をすれば商工会議所の運営すら危うくなるようなこの新ビル計画を新会頭となる人が素直に受け入れるかどうかは私は微妙なところだと思います。

もっとも最近の五輪に対するコメントなどを見ると、もしかするとこれは大田さんはそんなことは百も承知で今まで散々市政を振り回してきた秋葉市長に対する最初で最後の意趣返しかなととも思えるのです。