新年明けましておめでとうございます。
昨年はこのブログにお付き合い頂きありがとうございます。新球場建設の現場報告から始まったこのブログですが街づくりにスポーツ、食べ歩きと気の向くままにネタを取り上げてきました。本年も今まで以上に無節操に行くつもりですのでよろしければお付き合いください。

年末年始にかけて機会があったので初めての店を含めて何件か食べ歩いたのですがそちらは改めて取り上げるとして新年最初の記事は西風新都についてです。

昨年末にRCCニュースで広島市がアストラムライン西風新都線について広電石内東団地を通るルートで調整しているというニュースが流れました。

アストラム西風新都線 「石内東ルートで調整」
アストラムライン延伸計画の「西風新都線」について、広島市の松井市長は、RCCの取材に対し、石内東地区を通るルートを採用する方向で調整していることを明らかにしました。
 「ルートに関しては、石内東のあたりで開発が進むということがだんだん目に見えてまいりましたから」(松井市長)
 アストラムラインの「西風新都線」は、広域公園前から西広島までの6.2キロを結ぶ計画です。
 石内東地区は、計画のルートの南側にあり、大型商業施設や住宅団地の開発が進んでいます。
 松井市長は、「ここを通れば、利用者の増加が見込める」と話しています。
 石内東地区には、アストラムラインの軌道を設置できる広い道路が出来る予定はありませんが、建物の間に高架の橋脚を立てて、軌道を設置する方針です。
 西風新都線の新しい計画は、来年7月ごろ発表されます。
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(RCCニュース 12/29 18:35)


この石内団地ですが元々は1972年から73年にかけて宅地開発を目的に用地買収をしたものですが県が周辺道路のなどが未整備なことを理由に一帯の開発を凍結させました。開発行政を引き継いだ広島市は86年に開発凍結を解除し、89年に西風新都の実施計画が決まりました。幾度かの計画変更で宅地のみから商業施設をメインに計画を変更。核テナントはイオンモールで20ヘクタールの造成地の売却が発表されています。イオンへの土地の引き渡しは15年11月に完了予定です。イオンモールは計画では4階建て延べ約6万5000平方メートルの店舗と、2階建て延べ約1万9,000平方メートルの2棟で実現すれば中国地方最大級になります。
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残る50ヘクタールは宅地や流通施設の整備を想定し、環境評価書などによれば五月が丘団地との境界に近い北側は10階建て程度の共同住宅を計画となっています。。
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この団地へのアクセス道路としては主に草津沼田道路と石内バイパスを想定していて石内バイパスからは五月が丘交差点を避けて進入する経路として免許センターのある西側の団地から五月が丘、己斐峠方面へと抜ける西風新都外環状線の一部である片側2車線の石内中央線が着工されています。
 
当初アストラムライン西風新都線は修道大学前から南下して石内団地と五月が丘団地との境の部分で東へ進路を変えてトンネルとなる計画でしたが、先のRCCニュースによれば石内東団地を貫通する形で調整しているとのことです。

元々西風新都線の計画が再浮上した大きな理由は前市長時代の計画では700億とされていた事業費が地価の下落で大きく下がった為と報じられてきました。西風新都線は大きく分けて修大以南の高架部、トンネル部、己斐上からの高架部の3つの工区に分けられます。このうち地価が関係するのは最後の己斐の部分です。計画では伴広島線の沼田別れ交差点からJR西広島駅北口まで貫く都市計画道路己斐中央線を建設し、その上に高架を通すことになっています。この都市計画道路を建設するためには約660世帯を対象にした区画整理が必要でそのうち200世帯が立ち退きとなっています。この費用の全部か一部かは分かりませんが少なからぬ金額が西風新都線には含まれています。この部分が大きく下がったこと、己斐峠を狭小で緊急車両の通過もままならぬこと、そして巨大ショッピングモールの建設が西風新都線の建設を後押ししています。
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広電が市に出した報告書によれば石内東団地へのアクセスは先に書いた通り草津沼田道路と石内バイパスを想定していて伴広島線でのアクセスは全く想定されていません。それにも関わらず己斐峠と五月が丘団地の中間地点に石内中央線の出口が建設されます。そうなれば西方面から伴中央線での進入が発生することは容易に想像ができます。そうなれば現在でもパンク状態の伴中央線は身動きが取れない状態になります。
ですので広島市は己斐中央線に手を付けざるを得ないのです。

また広島市の事情として段原地区の再開発が平成25年度で終了しますのでここを担当していた部署をそっくり己斐に向けられるということがあります。JR向洋駅前の青崎地区を除けば大規模な区画整理を行わなければいけない場所というのは己斐以外にはありません。また費用の面から言えば府中町のJR山陽本線天神川駅の建設費が全額イオンモール(当時はダイヤモンドシティ)の負担であったことをを考えれば駅舎や高架の建設費用のイオンなり広電の一部負担は期待できるのではないでしょうか。

アストラムライン西風新都線では大した需要はないという見方も多いようですがイオンモール直結ということになればソレイユの新幹線口からのシャトルバスや天神川駅からの利用者を見ればそれなりの数はいるでしょうし、石内東団地は石内中央線で免許センターや五月が丘団地とほぼ平面で繋がりますのでアストラムの駅前にバスターミナルを設置しイオンの巨大な駐車場を利用したパークアンドライドを導入することで周辺の交通事情を大きく変える可能性があります。

また西風新都線が完成すればJRと広電の西広島駅からイオンモール・修道大学・市立大学・安田女子大がアストラムラインで繋がります。そうなれば沿線の学生達のライフスタイルは大きく変わるのではないでしょうか。横川からの高速4号経由のバスというのは使ってみれば分かりますが野ざらしのバス停で雨の日も雪の日も立ち尽くすのは実にうらいものです。そんな辛い思いをするならアストラムという選択肢ができればそちらに移る学生もある一定数はいるでしょう。修道大学あたりは学生数では遥か多い広大を上回るに交通事故に頭を抱えていますので軌道系交通で通えるようになるというのは大学にとっても有難いでしょうし大学自体の価値向上にも繋がります。
長々と書きましたが私の結論は「アストラムライン西風新都線はきちんと周辺環境を整備すれば採算ベースまで行くかは分からないけど重要な都市基盤となる」です。

2013/01/11追記
下記部分でリザーブ空間あり地下構造物の敷設に支障はないという指摘を頂きました。

最後にアストラムラインの市内線ですが、この10年で広島市は市内の南北を貫く大雨用の巨大な送水管を何本も南北に通していてその深さは地下10数メートルから20数メートルに達します。その下を潜って軌道系交通を建設するとホームの深さは地下30メートルとかになります。地下10階以上の深さからエレベーターなりエスカレーターで上がり下がりする時間のこと考えたら広電とそんなに変わらないんじゃないの?と思うのが正直なところです。少しづつ行政と広電にとって負担にならない規模の改善を続けていけばいいのではないかと思うのです。まずは「とっとと駅前線の結論出せ」と「はよ信用乗車始めろ」でしょうか。