8日の夕方、広島電鉄は臨時取締役会を開き、越智秀信社長の取締役への降格を決議した。事実上の解任で、後任には椋田昌夫専務が同日付で昇格したと発表をしました。

翌9日に椋田社長は就任記者会見を開き越智前社長が推進してきた路面電車の運賃引き上げと広島駅前線の2つの事業が前社長の独断で会社の方針ではなく白紙に戻すと表明しました。

広島駅前線については越智前社長は地下案を強く推していましたがJRや市議会、広電社内からも高架案を支持する声が強く調整がつかない状態が続いていました。また地下案を支持する理由についても度々変わっていました。以前直接越智氏を取材したある新聞記者氏に聞いたら「高架は美しくない。地下のほうが都会的」という唖然とする理由だったそうです。

運賃引き揚げに関しては何が対立したのかよく分からなかったのですが10日付の毎日新聞に書いてありました。
こうした方針は取締役会の了解を得ていなかったという。椋田社長は「この景気で簡単に値上げはできないし、理由がいる。前社長が出した案はデータなどに無理があった」と説明。越智前社長の案には値上げに伴うリストラ案もあり、「厳しい労使関係になりかねない案だった」と話した。
値上げ申請がリストラを伴うものだったのが直接の原因だったようです。またこの引き上げを元に40編成程度の車輌を15年かけ更新する総額では120億円の計画が効果に見合うかが不安になったというのもあるでしょう。結局のところ自分達の財布に手を突っ込まれそうだったので切ったというところなんでしょう。

このあたりは元運輸官僚として広電を交通インフラを担うものとして公共性を重視する前社長とあくまで私企業だとする社内派の対立という構図が見受けられます。

元々越智前社長と広電の縁は運輸省時代に消費税額を超える値上げの認可に前社長が奔走したのが始まりです。今回も役所との折衝には自信があったので広電社内の意見すらまとまってなかった段階で単独で国交省と調整を始めたようです。現場からはただでさえバスに対して時間的優位が無いの上に値上げだと客離れを懸念する声が出ても不思議ではなく、その社内の声を背景にクーデーターとなったのではないでしょうが。

越智氏は解任後の取材に「検討段階で多くの人に知ってもらい、意見や感想を聞きたかった」と答えていますがならばもうちょっと社内の声を聞く姿勢を持っていたらこのような事態にはならなかったでしょう。それと自らの社内での発言力が自分を呼び寄せた大田元前会長という後ろ盾がいたからということを理解できてなかったのではないでしょうか。

椋田社長は広島駅前線については広島市に協力するとしていますので高架で決まりとなるでしょう。一方で今後は費用分担がネックとなります。本来なら交通結節点改良事業のルールとして国と市と広電が1/3づつ負担するのが筋なのでしょうが広電に30億円強の費用負担に耐えられるかが疑問であります。