呉市音戸町坪井の音戸漁港防波堤は、戦時中に鉄鋼船の代用として建造されたコンクリート製被曳航油槽船を再利用しています。防波堤として今も利用されているコンクリート船としては依然取り上げた安浦港の武智丸がありますが武智丸がエンジンを積んだ「船」であるのに対して、こちらは被曳航とあるように他の船に曳かれることを前提とした海上輸送用の石油タンクといった代物です。形状も海中に沈む円柱型のタンクに曳航用のへさきを付けた形で船というよりも大戦中の潜水艦に近いといった方がいいかもしれません。

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船体右側の雁木や左側の壁は防波堤工事時に追加されたもののようです。383d8b7c.jpg



へさきは鉄板で覆われています。eab05f45.jpg



船首には給油口の様な穴の跡があります。e0394b1b.jpg



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激しい海上戦で輸送船を失い鉄も足りないので仕方なく造った代用品ですが、だからこそ平和な時代になっても防波堤として今でも残り役立っているというのは皮肉なものです。

付近には駐車場がありませんし道路も広くないので車で行くのは止めたほうがいいです。バスですと田原経由の坪井バス停で下車です。個人的には自転車で江田島の他の建築めぐりのついでに立ち寄るのがお奨めです。


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