JR西広島駅南口周辺で民間主導の「西広島駅前西地区再開発プロジェクト」準備が進んでいることが明らかになりました。

3月30日には地権者達による西広島駅西地区市街地再開発準備組合が設立されました。5月に予定する第1回総会で17年度の事業計画や資金計画を決める予定となっています。準備組合の構想では高層マンション・事務所・クリニック・公共施設・コンベンション機能・生活環境を補完する業務機能を想定されています。18年度の事業計画、22年度の完成を目指します。

再開発の対象となるのは宮島街道とJR山陽本線に挟まれた1.9ヘクタールでその中には広電西広島駅と一体化しているひろでん会館や宮島街道に面した己斐中通商店街、市が国鉄資産事業団より取得し駐車場・駐輪場としても使用されている0.4ヘクタールも含まれます。
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昨年度より地域の活性化を目的として広島土砂災害復興に取り組み広島スタジオを設置している東京大学復興デザイン研究体が7回に渡るまちづくりに関する勉強会を開催してきました。様々な支援策を提案する中で第1種市街地再開発事業として都市機能を再整備する事が望ましいという声が上がり再開発プロジェクトが始動する事となりました。
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広電西広島駅に併設するひろでん会館は昭和39年竣工ということで築50年を超え、広電としても建替えを検討していました。広電も再開発への参加に前向きで「地権者がまとまるなら再開発に協力したい。市のまちづくりにとも連携する」と中国新聞の取材に応えています。

西広島駅周辺というよりも己斐地区の再開発はアストラムライン延伸に翻弄されてきたと言っても過言ではありません。元々西広島駅南口は昭和48年に区画整理を完了していました。現在南口周辺に見られる商店などはこの時代のものです。その後平成13年にアストラムラインの西広島までの延伸が決まり、広島市は同年11月と翌年1月に住民説明会を行っています。この時点では完成を平成27年ごろとしていましたが、その後市の財政難による公共事業見直しなどにより平成40年代まで開通予定がずれ込み、昨年度よりようやく地質調査に取りかかりました。この間西広島駅周辺の再開発は棚上げされわずかに用地買収が行われたのみでした。これはアストラムラインの駅の位置が決まらないければJR駅の高架駅舎も南北を結ぶ立体都市計画道路である自由通路も位置が決まらず工事に取り掛かれなかったからです。結果として広島都市圏で有数の乗降客数でもあるにも関わらずJR西広島駅はエレベーターなどのバリアフリー整備も行われませんでした。しかしアストラムライン延伸を前提としたJR駅を含む再開発が決定したことにより高架駅舎・自由通路・南北口前広場の整備が開始されました。

この南口前広場の再整備にはひろでん会館の建替えやアストラムラインの延伸が実現する際には自由通路をひろでん会館まで延ばしていきたいという計画があることが平成24年3月開催の第38回広島都市計画審議会議事録に記載されています。この通路が実現しますとJRと広電の間にある旧西国街道沿いの商店は人の流れから完全に取り残される形になります。そのことに対する危機感、それと自由通路ができることにより北口広場に新設のバスターミナルからの歩行者に加えてこれまでJR西広島駅の東西に踏切に分かれていた歩行者が合わさり広電とJRの間を行き来する歩行者が相当数増加することにを商機と捉えたことが地域全体を巻き込んだ再開発となったと思われます。

広電の立場から見ますとひろでん会館はこの2月に広島市により耐震強度不足が公表されことからも分かりますように老朽化が著しく建替えは避けられない状況でした。しかし建替えるとなると食品スーパーを始めとするテナントの工事中の仮店舗が必要となります。ここで地域再開発に参加をしますと再開発エリア内に仮店舗を持つことが可能になります。また市に対してひろでん会館までの自由通路延伸の予算を組んでもらおうとすると南口広場再整備に実際に動き出すこの時期がリミットであったとも言えます。

準備組合が想定している公共施設・コンベンション機能についてはJR駅北口にある己斐公民館の入居が考えられます。己斐公民館はアストラムラインが通る己斐中央線の道路用地内に位置していて移転は避けられません。この己斐公民館は他の標準的な公民館の2/3程度しか延床面積がなく周辺住民からは拡充が強く求められていました。また広電は大田社長の時代にひろでん会館建替の際にはホテルや宴会場を導入するアイデアを披露しています。自社食品スーパーの競争力を上げるために狭いひろでん会館からJR駅南側に移転しひろでん会館を公民館と合わせてコンベンションセンターとすることは充分に可能性があると思います。

この再開発で鍵となるのは広電と広島市の動向です。ひろでん会館は建物は広電所有ですが土地は別に地権者達がいます。中国新聞記事中の「地権者がまとまるなら再開発に協力したい」の地権者とはひろでん会館の地権者を指すものと思われます。これらをスムーズにまとめられるかどうかが重要です。
広島市は業界紙ではオブザーバー的な立場で参加したいと答えてますが実は広島市は再開発エリア内に国鉄清算事業団から先行取得した土地を持つ最大の地権者です。またシャッター商店街となっている宮島街道沿いの中通り商店街は市営店舗で本来は道路拡幅の立ち退き者の為の店舗で設置時の入居者が出た後は新規入居者を認めず取り壊し予定でした。
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さらには冒頭の再開発エリアの地図には八幡川沿いの石内己斐線の拡幅に伴う立ち退きする店舗・住宅も含まれていてこの再開発が市の事業を円滑に行うための側面支援の性格が強いことが分かります。広島市が地権者の反感を買わぬ程度に口と手と金を出していく必要があります。

最後にどんな再開発になるかですが民間では最大の地権者となる広電の都合と東北震災でも広島土砂災害でもコミュニテイ活動の支援をしてきた東京大学復興デザイン研究体が関わるということで横川駅前のカジルモールに更に地域住民が交流できる要素を加えたような計画になるのではないかと私は予想しています。気軽に入っていき適当なところで立ち話をしていく路地的な要素、そんなものが取り入れられるのではないかと勝手に考えています。
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